新ブランド「dTV」に見る今後のオンデマンドサービスのあるべき姿

本日、「dビデオ」から「dTV」に刷新されるdocomoの定額制動画配信サービスについて書こうと思います。書こうと思ったキッカケは先週アップされていた以下の記事です。

筆者の定額制動画配信サービスの利用歴

まず私が利用したことのある定額制動画配信サービスについて列挙します。

  • dビデオ (docomo)
  • ビデオパス (au)
  • U-Next
  • Hulu

いずれも試用期間のみの利用のため、1円も払っておりません。実際には、どのような作品があるかを確認した程度ですので利用したとは言いにくいです。私の率直な感想は「見たい作品が無いわけではないが数としては多くない」でした。この辺りは嗜好に依存するところであるので、ドラマやアニメ等のシリーズものが好きな人にとってはいいサービスであろう、というのが私の定額制動画配信サービスに対するイメージです。

これまでの「dビデオ」の実態

まず記事からの引用。

dビデオは、NTTドコモとエイベックスが合弁で展開する事業であり、3月の時点で460万人と、日本のSVODとしては2位を大幅に引き離す、圧倒的なユーザー数を誇る。 

 前述したとおり動画配信サービスを利用していなかったので、市場規模について全く知らなかったんですがdビデオは圧倒的首位との事。ではなぜそんなサービスが今回刷新されることとなったのか。次の引用。

テレビは、ポン、と点けると、なにか始まるじゃないですか。それがつまらなかったら、ザッピングする。なにかが始まる、これはある意味「一つの基準を示す」ことだと思っているんです。<中略>しかし基準がゼロだと、「さてどうしよう」と戸惑ってしまう。<中略>なにも基準がない中で選べといわれると、“選ぶこと”にエネルギーがいると思うんです。私たちがこれまでやっていたことは、お客様にそうした無理を押しつけているな……という部分があって、それをなんとか変えたいんです。「オンデマンドってなんだっけ? デマンド(要望)、ないんじゃないの?」今回、1年かけて全体を見直したんですが、この疑問がスタートラインです。

 

 定額制サービスにおけるこれまで競争指標は「いかにコンテンツを揃えられるか?」が主でありました。確かに様々な趣味・嗜好に応じたコンテンツをそろえる事で利用者の増加が期待できますし、それによってユーザに継続して利用してもらえるサービスになります。

しかしながらコンテンツが多いほど、「見たい作品が埋もれてしまって見つけにくい」という問題が発生することが考えられます。私が前半で述べた感想はこれに起因してるのではないかと思います。これについてはUIの変更によって問題への対応がある程度可能です。

先程の引用部分はUIというよりはUXの問題についてのコメントだと思われます。大量のコンテンツから欲しいものを探すのに労力を使うことは想像に難くありません。これに対応する必要がある、というのがサービス刷新のキッカケというわけです。

dTVにおける”ザッピングUI”

以上の課題を踏まえ、生み出されたのが「ザッピングUI」です。

ザッピングUIでは、まずいきなり予告編動画が再生される。動画は「時間軸」と「ジャンル軸」で作られていて、左右に動かすと動画のジャンルが替わって再生が始まり、上下に動かすと、別の時間におすすめされた動画が表示される。ザッピングという言葉通り、テレビのチャンネルをザッピングする感覚で使うのだ

これと共に過去の視聴履歴等に基づいた「レコメンド」機能の強化もおこなわれるようです。ユーザが能動的に見つけるのではなく、与えられたものから選ぶ方法をとることでユーザの負担を軽減するという流れ。これまでのジャンルや名前による検索機能もそのままとのことです。UIを刷新することで、これまでユーザが視聴していないコンテンツを紹介でき、サービスとしての魅了が向上しそうな気がします。

そう言えば似たようなサービスが・・・

最初この記事を読んだときには「なるほどなー」と思ったんですが、よくよく考えてみると現在のYouTubeのシステムってこれに近いなと思いました。ザッピングとまではいきませんが、トップページを開けば過去の視聴履歴に基づいて複数のコンテンツが表示されますし、あるコンテンツを再生すれば自動再生機能によって関連コンテンツが次々再生されていきます。なんならコンテンツの間にCMも挿入されるので、非常にテレビっぽい。一概に比較はできませんが、dTVの取り組みはYouTubeですでにやられている手法の焼き直しにも見えてきました。

まとめ

定額動画配信サービスはただ単純にコンテンツ数を増やすだけではなく、既存のコンテンツをどのように魅せるかが問われるフェーズに来たようです。これを”コンテンツ利用効率”とでも呼べばいいのでしょうか。

いずれにせよ大量の新規コンテンツが供給され続ける現代は、良いと思える作品を探すのに労力を使う時代です。そんな時代には「ザッピングUI」は合っているのかもしれません。