”ルーティンからの脱却” - 映画「Mr.Children REFLECTION」レポート
最近、音楽系のネタが続いてますが今回も音楽ネタです。
先週公開された映画「Mr.Children REFLECTION」の感想を書いていきたいと思います。
ちなみに筆者は長い事*1ミスチルファンをやっておりますので、それなりにMr.Childrenに対して思い入れがあります。
映画の概要
今回の映画は、昨年行われた「Mr.Children FATHER&MOTHER 21周年祭ファンクラブツアー」最終日Zepp Sapporoのライブ映像とメンバーへのインタビューから構成されています。インタビューはあくまでライブ映像の”つなぎ”として挿入されている程度なので、実質的にはライブ映像をほぼノーカットで流しているだけの作品とみていいでしょう。
ではただのライブ映像かと言うと、それは違います。ライブ本編のほとんどが未発表曲で構成されているんです! しかも普段、アリーナやスタジアム、ドームなど大きな会場で行われることの多いミスチルが「ライブハウス」で演奏する映像。当然のことながらファンクラブツアーの抽選倍率は非常に高く、私も抽選に落ちて行けなかったライブです。ゆえに貴重なライブ映像作品なのです。
”これからのMr.Children”
映画予告でボーカル桜井から語られている通り、この作品は”これからのMr.Children”を映している作品になっています。そしてその根拠は以下の2点に基づいています。
- アルバムのリリース→ツアー というこれまでのルーティンを逆にした
- 小林武史のプロデュースから、バンドのセルフプロデュースへ
前者については、すでに告知されている通り「Mr.Children TOUR2015 REFLECTION」のツアー最終日にアルバム「REFLECTION」が発売されることになっています。近年のMr.Childrenの活動はアルバムリリース→アリーナツアー→スタジアム or ドームツアーという形式を2~3年おきに繰り返していました(作品でいうと2007年「Home」以降)。こういったルーティン的な活動を変えることで、お客さんに新しいパフォーマンスを見せられないか?というのが、昨年のFCツアーの目的だったようです。
後者については、週刊誌等でも取り上げられている話ですが、デビュー時からのプロデューサーである小林武史から離れて、バンドメンバー4人で音楽制作をしているということです。昨年のFCツアーでは従来のサポートメンバーであった"Sunny"と5人での演奏になり、シングルとしてリリースされた「足音 ~ Be Strong」ではクレジットが「Produced By Mr.Children」になるなど表向きにもセルフプロデュースの現状が見えてきています。小林武史はMr.Childrenにとって切り離せない存在であるものの、その音楽性ゆえにミスチルファンでも意見が分かれるところとなっていました。2007年の「Home」ツアーからライブのサポートメンバーとして参加するようになり、既存曲を”ピアノが目立ちすぎる”アレンジにしたことや”ストリングスの多様”が反感を買う要因になっていました。ファンの中には、小林武史がプロデュースから離れることによってアルバム「Discovery」のころの様な”バンドサウンド”が復活することを望んでいる人もいるわけです。
披露された未発表曲
- Melody
- FIGHT CLUB
- 斜陽
- 蜘蛛の糸
- I Can Make It
- 進化論
- 足音 〜Be Strong
- 幻聴
- 未完
Zepp Sapporoの公演時に未発表曲として披露されたのは上記の9曲。映画には収録されていない、曲名未定の未発表曲も含めると全10曲。ライブの半分以上の楽曲が未発表曲だったことになります。このツアーに行けた人たちは10曲もの新曲を”まっさらな状態”で聴けたのだと思うと本当に羨ましい。
というのも映画公開までに、「足音 〜Be Strong」「Melody」はCDとしてリリースされ、「斜陽」は年末の音楽番組で披露、「幻聴」は映画の予告編で流れる、といった具合に何曲かは既に聴いた事のある状態になっています。それゆえ劇場で”まっさらな状態”で聴けた未発表曲は5曲程度。これが個人的にはすごく残念だった。
一方で、未発表曲である「FIGHT CLUB」「I Can Make It」、近年ライブで演奏されることがほとんどなかった「旅人」では躍動感あふれるバンドサウンドが見られたので、その点ではとても満足でした。特に田原さんのギターリフが今までにはなかった感じで良かった。
映画以外の選択肢?
近年ではアーティストのライブやドキュメンタリー作品が劇場で公開されることが多くなってきました。劇場公開にあたっては商業的な側面(実際のライブへの誘導とか、グッズ販売とか)がある一方、やはり劇場の設備、特に音響面の設備が観客にとっては大きなメリットになるかなぁと思ってます。今回のMr.Childrenの映画でも音の良さを十分に感じ取ることができました。特に音のダイナミックレンジの広さ。
ただ先に述べたように、”まっさらな状態”で聴かせたいという意図がアーティスト側に明確にあったなら「ライブビューイング」でも良かったんじゃないかというのが個人的な感想です。もちろん実験的な意味合いの強いツアーだったから、下手に中継用のカメラがたくさん入ったりすると、アーティスト側に変な負荷がかかるということも考えられるけれど。それでもファンクラブ会員でツアーの先行に外れた人たちの中には、自分と同じような気持ちの人もいるんじゃないかと思います。
まとめ:どんな人向けの映画か?
いろいろと述べてきましたが、ミスチルファンなら見に行って損はしないかと思います。ただ一般作品と比べ料金が高いことと未発表曲中心の内容なので、ミスチルをそれほど知らない人と一緒に見に行くようなことは好ましくないでしょう…。この作品キッカケで興味を持つ可能性も無くはない?
いずれにせよ、こういった内容の映画が公開できるのも、ある一定のファンを獲得しているアーティストだからなせる技なのだということは事実です。音楽フェスとかで名前聞いたことあるくらいで曲はほとんど知らないけど、なんとなく見に行ったアーティストのパフォーマンスなんか、既発曲だとしても知らない人からしたら全部”新曲”な訳で。そういう状況でお客さんの興味を引けるかどうかっていう。それと比べると、この映画はそもそも自分たちMr.Childrenの事を知ってくれているという前提の上で成り立ってます。そういう意味ではMr.Childrenはビッグなアーティストなんだなぁと思わされる。
それでは、また。
*1:ファンクラブ加入11年目