スタンダードはどっちになる?ワイヤレス給電におけるWPC(Qi) 対 A4WP&PMA

こんにちは。今回はワイヤレス給電についての話を書こうと思います。まずは引用から。

なにやらワイヤレス給電に関わる2団体が統合に正式合意したよう。「Qiは?」と思った方、今回の記事のターゲットです。是非続きを読んでいただきたい。

ワイヤレス給電を推進する3団体とそれらの規格について

日本においてワイヤレス給電技術と言えば、おくだけ充電(docomo)に代表される「Qi規格」が有名です。一方で世界に目を向けるとQiを含め3つの規格が存在し、それぞれに推進団体があります。各団体について少し掘り下げて見ていきます。

  1. WPC(Wireless Power Consortium)
    規格名称:Qi, 技術方式:電磁誘導方式, メンバー数:212(2014.11時点)
    スマートフォンへの採用が多く、認証を受けた製品の数は他に比べ圧倒的。
    現時点ではワイヤレス給電のスタンダードといえる。
  2. A4WP(Alliance for Wireless Power)
    規格名称:Rezence, 技術方式:磁界共鳴方式, メンバー数:121(2014.11時点)
    製品化されたものはいまだ無し。クアルコムサムスン等が中心メンバー。
  3. PMA(Power Matters Alliance)
    規格名称:Powermat, 技術方式:電磁誘導方式, メンバー数:68(2014.11時点)
    メンバー数は最も少ないが、IEEEGoogleが参加していることが特徴。
    充電器付スマホカバーやモバイルバッテリーへの採用が進んでいる。
    昨年に米・スターバックスがPowermatを利用した充電ステーションの導入を決定したことにより、陣営への追い風となっている。

詳しくは以下のリンクより。

 A4WPとPMAの統合について

はじめに引用したように、A4WPとPMAが2団体の統合に正式に合意しました。この件については昨年2月から検討が進んでおり、今回のニュースは”正式に”というところのみがポイント。前セクションを見て分かる通り、この2団体の規格はそれぞれ磁界共鳴方式、電磁誘導方式を採用しており技術的には異なっています。しかし技術の統合が行われるわけではなく両方サポートするというスタンスの様です。

この2団体の統合が正式決定したことで、本格的に「WPC 対 A4WP&PMA」の構図が鮮明になってきたように思われます。やや複雑なのは、1団体にしか参加していない企業がいる一方で、複数団体に参加している企業もいるためメンバー数での比較はあまり意味をなさないという点です。最終的には製品ベースでどのようなものができあがるのか、スターバックスのような商業施設との協力を増やせるかがこの戦いの鍵となりそうです。もしくは3つで統合する?

最近のワイヤレス給電対応製品と巨人インテルの動き

 大幅な刷新がなされたサムスンのGalaxyシリーズの最新機種「Galaxy S6/S6 edge」ではQiとPowermatの両方が採用されました。いずれの技術も電磁誘導方式、という点で共通しています。

docomoとしてはGalaxy S6/S6 edge が久々の「おくだけ充電」対応機種となりました。「急速充電」に対する優位性が少なくなってしまったため、2014年には対応製品が1つもない状況になりましたが、再び流行るのでしょうか。

 またPC分野に目を向けると、巨人インテルPCのワイヤレス化を目指しており、次世代プロセッサ"Skylake"ではA4WPのRezenceに導入する予定とのことです。日本におけるワイヤレス給電はスマートフォンに搭載されている「Qi」が圧倒的優位ですが、ノートPCでは「Rezence」がスタンダードになるかもしれません。

MediaTekは3つの技術方式に対応したマルチモードレシーバを開発しているようで、なかなかカオス。

まとめ:スタンダードは巨人の動き次第で変わりそう

いくつか文献を引っ張りながら3つの技術について説明をしてきましたが、どちらが勝つか(スタンダード)になるかは現時点では分かりません。場合によっては、国・地域によってスタンダードになる規格が異なる未来もあるかもしれません。インテルクアルコムGoogleあたりがどう動くのか、巨人の動きに注目です。

それでは、また。